皆さん、発達障害ってご存知ですか?
と聞いたら、知ってますよ、という人が多いと思います。
でも、発達障害についてどれくらい知っているかと聞いたら、詳しくは…というかも知れません。
私も、自分の子供が発達障害であると知るまでは、そうでした。
今回は、ピックアップ絵本として、
『こわいきもちとちょっとのゆうき』を読んだ感想と、発達障害の子を持つ私から見たおすすめ点もご紹介します。
発達障害の男の子のおはなしです。
多くの人に知ってもらいたいと思うことが、書かれていました。
・32ページ
・発売日 : 2020/9/24
定価:1500円+税
発達障害の子供の目線で描かれた、小さなストーリー
この本の素晴らしさは、発達障害の子供の目線で描かれているところです。

作者である、たかみやかなえさんは、発達障害であるご自身のお子さんの気持ちを、細やかな言葉でしっかりと、表現しています。
小さなストーリーですが、発達障害の子供にとって、その小さなストーリーがどれほど大きなことなのかを伝えています。
かたつむりのでんちゃんと、おばあちゃんが大好きな、小学一年生のしんや君は、みんなと違うところがありました。
いつも友だちに声をかけようとするしんや君は、言葉がでてきません。そして、心が「いっぱいいっぱい」になってしまいました。
そんなしんや君を、おばあちゃんは優しく見守ります…
発達に遅れがある子供たちがどのような気持ちでいるのか…
具体的に説明できる人はなかなかいません。
けれど、この本のおはなしでは、しんや君の目線で描かれ、発達障害の子供たちが感じている不安や悲しい気持ちが伝わってきます。
おばらふうこさんのイラストが素晴らしい絵本
この本のもうひとつの素晴らしいところは、このおはなしにぴったりのイラストが描かれていることです。
小原風子さんのイラストは、はっきりとした線を持ちません。
色合いから、しんや君の不安な気持ちが伝わってきますが、その中に、優しい空気が流れています。
表情や仕草から、しんや君の優しさ、おばあちゃんのあたたかさが伝わってくるのです。
輪郭を持たない絵は、大人にとっては一見不思議に見えるかも知れません。
けれど、線は自由であって良い、いろんな形があっていい、と教えてくれます。
それは人も同じで、いろんな個性があっていいのです。
子供と一緒に読む時には、「線が面白いね」「葉っぱを木にしていてすごいね」と、お話と一緒に、色や筆使い、形などを話題にしてみても良いと思います。
うまく話せなくてもいい ゆっくりでもいい…発達障害とは
最近よく聞くようになった発達障害。
この絵本は、発達障害がどんな障害か、少しでも考えてもらえるよう工夫されている絵本だと思います。
発達障害とは…
発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達の偏りによる障害です。
得意・不得意の特性と、その人が過ごす環境や周囲の人との関わりのミスマッチから、社会生活に困難が発生します。発達障害は外見からは分かりにくく、その症状や困りごとは十人十色です。
LITALICOジュニア
外見からは分かりにくい…発達障害の子供たちは、理解されない苦しみを常に持っています。
そして、しんや君はみんなと違うところが2つありました。
そのため、発達障害の特性を「自分勝手」「わがまま」「困った子」などと捉えられ、「怠けている」「親の育て方が悪い」などと批判されることも少なくありません。
LITALICOジュニア
複数の特性を持ち合わせている子供も多く、また、学習障害をあまり理解せずに、しつけの観点から見て学習障害の子を持つ親に意見やアドバイスをしてしまう人もいます。
この本は、発達障害の子をもつ親と、発達障害をあまり理解していない大人、学校の先生や、子供に接する機会のある、全ての人におすすめしたい絵本です。
まとめ
私はこの本を読んだ時、涙がじんわり溢れました。
あぁ、私の娘の気持ちを書いてくれた方がいた…と。
簡単に実は私の娘は「ちょっとの勇気」とは言えないほど落ち込み、二次障害にまで進んでいます。
(二次障害については、すまいるナビゲーターさんに分かりやすく掲載されています)
だからこそ、多くの人に読んでもらいたい。
学習障害についてもっと早く知っていたら、「甘やかしてない?」「もっときつく叱った方がいいんじゃない?」といった言葉にまどわされずに、また、学校という学習障害の子にとってつらい環境から、子供を守ってあげられたかも知れない…今回の記事は、そんな気持ちで書きました。
学校で、社会で、発達障害についての理解が深まりますよう…この本をおすすめします。
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